先生があなたに伝えたいこと / 【青田 恵郎】その方に合うように正確に人工股関節を入れることだけでなく、術後のケアや指導までが我々の大切な仕事だと思っています。【大橋 寛憲】最近では患者さんの意識が変わってきて、自ら人工股関節手術を希望される方がとても増えています。

先生があなたに伝えたいこと

【青田 恵郎】その方に合うように正確に人工股関節を入れることだけでなく、術後のケアや指導までが我々の大切な仕事だと思っています。【大橋 寛憲】最近では患者さんの意識が変わってきて、自ら人工股関節手術を希望される方がとても増えています。

福島県立医科大学附属病院 青田 恵郎 先生

福島県立医科大学附属病院
あおた しげお
青田 恵郎 先生
専門:股関節

青田先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
 子どもがまだ小さいので長生きしなきゃと思っています(笑)。

2.休日には何をして過ごしますか?
 子どもと遊んだり、趣味の船釣りに出かけたりすることが多いです。

福島県立医科大学附属病院 大橋 寛憲 先生

福島県立医科大学附属病院
おおはし ひろのり
大橋 寛憲 先生
専門:股関節

大橋先生の一面

1.最近気になることは何ですか?
 マラソンが趣味で100キロを超えるのが好きなのですが、最近、川の道フットレースという520キロくらいのレースのことが気になっています。近いうちに出たいなと思っています。

2.休日には何をして過ごしますか?
 もちろん、専ら走っています(笑)。

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先生からのメッセージ

その方に合うように正確に人工股関節を入れることだけでなく、術後のケアや指導までが我々の大切な仕事だと思っています。(青田先生)
最近では患者さんの意識が変わってきて、自ら人工股関節手術を希望される方がとても増えています。(大橋先生)

Q. まず、変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)とはどのような疾患なのでしょうか?

正面図青田先生:骨盤側の寛骨臼(かんこつきゅう)と大腿骨頭の間でクッションの役割をしている軟骨がすり減り、骨と骨とが直接こすれ合うことで痛みや炎症を起こし、やがては関節が変形してしまう病気です。

Q. 変形性股関節症の原因とは?

青田先生:日本人の場合、変形性股関節症の患者さんの10人のうち8~9人は、赤ちゃんのときに発達性股関節脱臼や、先天性臼蓋形成不全(せんてんせいきゅうがいけいせいふぜん)などの股関節障害の既往があり、加齢に伴って変形性股関節症を発症します。残り1~2人はそういった断定的な原因がなく、老化などで発症します。原因のはっきりしているものを二次性の変形性股関節症といって日本人に多く、はっきりしないものを一次性の変形性股関節症といって、これは欧米人によくみられます。

Q. 股関節脱臼と臼蓋形成不全について少し詳しく教えてください。

福島県立医科大学附属病院 大橋 寛憲 先生、福島県立医科大学附属病院 青田 恵郎 先生青田先生:股関節脱臼は、生まれてから骨が成長する過程で起こるもので、股関節が完全にはずれている「脱臼」、はずれかかっている「亜脱臼」、そして先天性臼蓋形成不全による「軽度の脱臼」があります。臼蓋形成不全は、何らかの原因で股関節の屋根に当たる寛骨臼上部の臼蓋という部分が十分に形成されないために、大腿骨の骨頭部分がしっかりはまらないという疾患です。この臼蓋部分には、人の成長に伴って骨へと変わる軟骨があって、これは関節面の軟骨とは違うのですが、この軟骨が生まれつき小さいということも臼蓋形成不全を起こす要因の一つと考えられます。

正常、先天性臼蓋形成不全、先天性股関節脱臼

股関節脱臼も臼蓋形成不全もどちらも女性に多い疾患です。したがって、変形性股関節症の患者さんの数は女性が男性の5倍といわれています。

Q. なるほど。発達性ならば股関節脱臼は予防が可能ということですか?

青田先生:はい。多くの場合は後天的なものですから。たとえば赤ちゃんの頃に、自然な姿形でいること、つまり、おむつや抱っこをするときには股をちゃんと広げてするということで予防が可能です。

福島県立医科大学附属病院 青田 恵郎 先生Q. 次に変形性股関節症の治療についてお伺いします。変形性股関節症と診断されればすぐ手術した方がよいのでしょうか?

青田先生:すぐというわけではありません。早期なら運動療法や体重コントロール、痛み止めで様子をみるということは当然あります。ですが優れた保存療法がないというのも現実で、いずれは外科的治療が必要になることが多いと思います。

大橋先生:ジグリングといって、貧乏ゆすりのように股関節をぶるぶると動かすという、治療法があります。しかし、進行を遅らせるなど一定の効果がある患者さんもおられますが、当然ながら個人差がありますし、変形を正常に戻すことはできません。

福島県立医科大学附属病院 大橋 寛憲 先生Q. わかりました、それでは手術には種類があるのでしょうか?

大橋先生:大きくは人工股関節全置換術骨切り術があります。さらに骨切り術には、先天性臼蓋形成不全の場合、寛骨臼の屋根の部分が浅いので屋根を作り出して、骨頭の安定化を図ります(臼蓋形成術)。軟骨の摩耗が進んでいる状態では、骨盤の臼蓋の周りをドーム状に切って寛骨臼を移動させて骨頭を覆って荷重を分散させたり(寛骨臼回転骨切り術)、また、大腿骨頭の下の部分をくさび状に切除して内側に傾けたり外側に傾けたりして、関節面の触れ合う部分を関節の傷んでいないところに変える手術(大腿骨内反骨切り術外反骨切り術)などいくつかあります。これらを患者さんの症状に合わせて選択しています。

臼蓋形成術

寛骨臼回転骨切り術

大腿骨内反骨切り術

外反骨切り術

Q. 骨切り術のメリットとデメリットは?

大橋先生:メリットとしては、寿命がある人工股関節とは違い、痛みや動作に改善がみられて安定すれば、骨切り術で一生保つ方もおられます。将来的に人工股関節にするとしても、それまでの時間稼ぎができます。デメリットとしては、痛みが多少残る方もありますし、リハビリも人工股関節ですと翌日から全体重をかけられるのですが、骨切り術ですと杖をつきながら体重をかけてとなかなか大変です。また、人工股関節に比べて手術後の入院期間も長くなりますね。大体は4週間程度ですが、退院してからも骨がちゃんとつくまで、松葉杖を長く持たないといけないとか、生活動作に制限があります。そのため、1ヵ月も2ヵ月も仕事が休めないとか小さな子どもがいるなどの社会的な条件で、保存療法でしばらく頑張ってから人工股関節にしますという方もいらっしゃいます。

Q. ということは、若くても人工股関節手術をしたいという方も増えているのでは?

福島県立医科大学附属病院 大橋 寛憲 先生、福島県立医科大学附属病院 青田 恵郎 先生大橋先生:そういう方は明らかに増えていますね。当院では、人工股関節手術を受けられる平均年齢は50歳過ぎですが、最近はもっと若く20代、30代でも人工股関節手術を希望される方がいらっしゃいます。治療期間の問題だけではなく、みなさんの手術に対する意識が変わってきていて、痛みを我慢するよりは一刻も早く取り去って、よりよい毎日を送りたい、生活の質を上げたいと考えられる方が増えています。

青田先生:私自身、若い方はご自分の骨を残すことのできる骨切り術の方がいいだろうし希望も多いものだと思ってきましたが、今ではその考えも変わりつつあります。若い頃に骨切りの手術を受けて、学校も休んで治療をして、それでも痛みが残ったというような方が、痛みのない人工股関節にしたいという気持ちも理解できます。我々としても、若いから骨切り術と決めつけることはベストではないと思います。ですから、骨切り術と人工股関節のメリットとデメリットを正直に患者さんに伝え、患者さんに選択してもらうということも大事なのです。痛みが残るのはいやだという患者さんに、それでも骨切り術を勧めるということはありません。若くても、変形が軽度であっても、痛みを取りたいということで人工股関節手術を希望される方は、これからは増えるのでないかと思います。

Q. ではその人工股関節ですが、どれくらい保つものなのですか?

福島県立医科大学附属病院 大橋 寛憲 先生、福島県立医科大学附属病院 青田 恵郎 先生青田先生:患者さんには20年から25年といっていますが、最近の人工股関節は材質や性能が進化していますし、これからはもっと伸びると思います。

Q. 具体的にはどのように進化したのでしょうか?

青田先生:人工股関節にはポリエチレンの摺動面(しゅうどうめん:人工関節の可動部分のこすれ合う面)の摩耗が原因でゆるむというリスクがあります。しかし近年、摩耗しにくい優れたポリエチレンが開発されました。さらにその摺動面に、人工的に水の膜のような働きを持たせることで摩耗の低減を期待できるAquala(アクアラ)という技術も登場しています。摩耗しにくいことで人工股関節の耐用年数は大幅に伸びるのではないかと期待しています。

※Aquala(アクアラ)は京セラ株式会社の登録商標です。

Q. あまりお若いと、再置換(さいちかん:人工関節を入れ換えること)ということも念頭に置く必要がありますね。

青田先生:はい。摩耗でゆるむリスクは低減したとはいえゼロではありませんし、外から大きな力が加わって破損するということもあります。昔は、再置換というのは難しい手術でしたが、それも今では別の方の骨を移植することができるようになったり、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)のいい薬が出てきて土台となる骨をしっかり保てるようになってきたりしたことで、再置換手術もかつてほどは難しいものではなくなっています。

Q. 青田先生、大橋先生は、人工股関節手術時の切開方法では、「後方アプロ―チ法」を採用されているとお聞きしています。

青田先生:最近は筋肉を切らない前方アプローチ法を採用されているところも多いのですが、後方アプローチ法は展開が広く視野が十分に確保できるので、変形の強い場合でも再置換でも手術がやりやすく、非常に安定した成績の得られる手技なのです。

大橋先生:地域性もあるかもしれませんね。

青田先生:そうです。福島県には仕事好きの人が多く、大河ドラマでもやっていましたが、我慢強い方が多いんです。そのため、関節の変形がかなりひどくなるまで辛抱される方が多いですね。また、人工股関節にした後も過度に頑張って仕事する方が多く、昔ですとそれが原因でゆるんでしまうことがありました。今では少なくなりましたが、他の病院で再置換は難しいといわれて来られる方を治療することも我々の一つの使命だと思ってきました。私達の経験から、そういう方に広く確実に対応できるのが、後方アプロ―チ法だということです。

後方アプローチ法

後方アプローチ法

また、左右の脚の長さの差(脚長差)の補正や、脱臼しないように人工股関節を正確に設置するということにも対応しやすいアプローチ法だと思います。

大橋先生:変形が比較的軽度の場合はERP法(短外旋筋群温存法:たんがいせんきんぐんおんぞんほう)も有効です。

短外旋筋Q. ERP法とはどういった手術なのですか?

大橋先生:短外旋筋群というのは、股関節のいくつかの筋肉の総称なのですが、この一部を残すことで、骨頭がはずれにくくなり、脱臼のリスクを減らせるという手術法です。5年ほど前から行われるようなりました。

Q. やはり脱臼については、人工股関節手術を受けられた患者さんは気をつけた方がいいのですね。

青田先生:後方アプローチは、前方などに比べると少し脱臼のリスクが高くなりますから、特に3ヵ月ほどはあまり股関節を曲げないようにお願いしています。でもその脱臼も、最近ではずいぶん減りました。人工股関節のポリエチレン部分が摩耗しにくくなったことにより、以前より薄い厚みのライナーが使用できるようになったので、骨頭ボールは大きなものが入れられるようになりました。そのため、ジャンピングディスタンスという脱臼するまでの移動距離を稼ぐことができます。私が研修医の頃は骨頭のサイズは22mmでしたが、今では32mmの骨頭を使うこともできるようになりました。

骨頭サイズの違いによるジャンピングディスタンスの差

骨頭が小さい場合骨頭が大きい場合

大橋先生:合併症では感染血栓症があげられますが、当院ではここ何年も血栓症を起こされた患者さんはおられません。いい薬もありますし、幸いなことです。

青田先生:感染の確率も全体の0.3%くらいですね。清潔を保つためにいいということはすべてやって、決して手を抜かないことで万全を期しています。

Q. ところで青田先生は全国的に見ても、非常に多くの人工股関節全置換術をされていますね。たくさんの手術をするために工夫されていることなどはありますか?

福島県立医科大学附属病院 青田 恵郎 先生

青田先生:二度手間、三度手間になる手技はしないということでしょうか。料理でいうなら、下ごしらえをきちんとしっかりする。たとえば皮膚切開も、あとの手術がしやすいようきれいに展開し、止血もきちんとする。出血するとその度に洗浄しなくてはいけません。骨の表面もきれいに削り取り、カップをスムーズにはめ込めるようにする。そういうことの積み重ねが手術時間を短縮し、さらには感染の確率低減につながっていると思います。

大橋先生:手術時間が短いということはいろいろな工夫や対策の結果です。他にも、術前の計画で決めたサイズのインプラントに加えて、万一に備え、その前後のインプラントもすぐに出せるよう準備しておくようにしています。また、どんな時でもスタッフがバタバタしないようにするために、チームの連携プレーを日頃から大切にしています。

青田先生:ほこりを監視するカメラを使って、手術室内のほこりを測定したこともありましたね。

大橋先生:そうでした。人がちょっと動くだけでほこりが立つんです。ほこりを立たせないための動きの研究、そういうところにも気をつけるようにしています。

福島県立医科大学附属病院 大橋 寛憲 先生Q. 人工股関節手術を受けられた方が、日常生活で気をつけられた方がいいことを教えてください。

大橋先生:日常生活の動作は問題ありませんし、趣味程度のスポーツもしていただけます。しかし、格闘技ですとか体当たりするような激しいスポーツは、さすがに避けていただきたいです。それと土地柄、農家の方も多いのですが、少なくとも手術をした1年くらいは休んでいただきたいなと思っています。

青田先生:農作業はどうしてもされるんですね。検診のとき、顔が日焼けされていらっしゃるからすぐわかります(笑)。まあ、転倒や無理はしないようにしていただければよいと思います。あとは虫歯やばい菌にまつわるような病気は、なるべく早く治療するのが安心ですね。

Q. ありがとうございました。お話のまとめとして、人工股関節治療で先生方が大切にされていることをお聞かせいただければと思います。

福島県立医科大学附属病院 大橋 寛憲 先生、福島県立医科大学附属病院 青田 恵郎 先生青田先生:その方に合ったインプラントを、正確に入れるということが第一です。骨の状態が悪い方や腰が曲がっている方、左右の脚長差が極端な方などいろいろいらっしゃいますので、その方々に応じた手術をするということです。そして「手術しました、はい、次はリハビリ」ではなく、我々としてもしっかりケアをしていくことが大事だと思っています。特に脚長差があった方はリハビリが大変ですので、歩き方の指導をしたり、人工股関節の周囲に痛みや硬縮(こうしゅく:筋肉の持続的なこわばり)が残った場合はそれを除くための体操を指導したり、外来でのケア、リハビリの担当者と一緒に医療チームとして患者さんを良くしていくんだという気持ちを共有したいと思っています。

大橋先生:少しの痛みが患者さんにとってはすべて、ということもあるということを忘れずにいたいと思います。

Q. 最後に、これまで治療された患者さんのことで特に印象に残っていることがあれば教えてください。

青田先生:他の病院で、人工股関節のゆるみがひどくて再置換は難しいといわれた方が、松葉杖をついてどうにか当院へ来られて再置換手術を行いました。そして時間はかかりましたが1年半くらいで杖なしで歩けるようなりました。骨を移植してしっかり詰め、インプラントをきっちり固定して、あとは体操をしていただいたり、いろいろなケアをしたりしながら、リハビリと連携して一緒にやっていく中でだんだん良くなっていかれました。その過程を見るのも嬉しいことでした。そういう難しい症例はやはり心に残りますし、どのような患者さんにも今、我々が持っている技術でベストを尽くすことが使命だと、改めて感じさせられます。

Q. 最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

青田 恵郎 先生からのメッセージ

※ムービーの上にマウスを持っていくと再生ボタンが表示されます。

大橋 寛憲 先生からのメッセージ

※ムービーの上にマウスを持っていくと再生ボタンが表示されます。

取材日:2014.6.24

*本ページは個人の意見であり、必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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