先生があなたに伝えたいこと / 【前田 昭彦】人工股関節の摺動面と固定力の進歩、筋肉を切らない手術手技等により、人工股関節置換術の長期成績は飛躍的に向上しています。

先生があなたに伝えたいこと

【前田 昭彦】人工股関節の摺動面と固定力の進歩、筋肉を切らない手術手技等により、人工股関節置換術の長期成績は飛躍的に向上しています。

昭和大学横浜市北部病院 前田 昭彦 先生

昭和大学横浜市北部病院
まえだ あきひこ
前田 昭彦 先生
専門:股関節

前田先生の一面

1.休日には何をして過ごしますか?
 昨年までアメリカンフットボールのクラブチームに所属していました。今年は長男が小学生になってサッカーチームに入りましたので、一緒にサッカーをすることが多いです。また最近はアウトドアにはまっていまして、家族でバーベキューを楽しんでいます。ダッチオーブンなら少々寒くても楽しめるんじゃないかな(笑)。

2.最近気になることは何ですか?
 医療の行方です。医療費がどんどん増えていくのは間違いないですし、そのことも増税の理由のひとつだと思うのですが、みんなで知恵を出し合ってどういう風に解決していくのか、緊急の課題だと思います。

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先生からのメッセージ

人工股関節の摺動面と固定力の進歩、筋肉を切らない手術手技等により、人工股関節置換術の長期成績は飛躍的に向上しています。

人工股関節の進化について

昭和大学横浜市北部病院 前田 昭彦 先生Q. 今回は人工股関節の最新状況についてお話をお伺いしたいと思います。まず、人工股関節置換術の成績は、昔に比べてどれくらい向上しているのでしょうか?

A. 我々の持っているデータで、1986年頃から使われ始めた人工股関節については、一番古い患者さんで27年目くらい、平均して22年程度の成績が出ています。その内の92%の方が大きな問題なく日常生活を送っておられます。人工関節の耐用年数が10年、15年などと言われることを考えますと、これは非常に良い成績だと思います。今後もさらに、人工股関節の耐用年数は向上していくだろうと思います。

Q. 耐用年数が延びた理由は何でしょうか?

A. 大きな理由は、「人工股関節の摺動面(しゅうどうめん:人工関節のこすれ合う面)が改良されたこと」と「人工股関節の固定力が向上したこと」ではないでしょうか。
まず、摺動面についてお話します。人工股関節はポリエチレンのライナーと金属またはセラミックの骨頭と言う組み合わせを使うことが多いのですが、このセラミックの骨頭を使ったことで成績が伸びたのではないかと我々は考えています。セラミックのほうが金属に比べて表面が滑らかで湿潤性に優れています。湿潤性に優れているので、水分を保持しやすいため摩擦係数が減ります。摩擦係数が減ると、ポリエチレンライナーの摩耗によって人工股関節がゆるむという確率も下がってくるわけです。

人工股関節 イメージ

最新の話では、新しい表面処理技術、たとえば「Aquala(アクアラ)」は、ポリエチレンに細胞膜と同じ分子構造をもつMPCポリマーを表面加工し、ポリエチレンライナーの摺動面に水の膜のようなものを作ることで、湿潤性をアップさせています。セラミックの骨頭を使用し、ポリエチレンライナーにはアクアラ処理を施すことで、摩擦係数を格段に減らすことが期待できます。

※Aqualaは京セラ株式会社の登録商標です。

昭和大学横浜市北部病院 前田 昭彦 先生Q. セラミックは瀬戸物ですので、割れやすいんじゃないかと思ってしまいますが...。

A. セラミックも進化しておりまして、今はアルミナセラミックにジルコニアを混ぜているものがあります。硬度の高いアルミナに曲げ強度の強いジルコニアを配合しているので、割れる心配はほぼないのでないかと思います。

Q. わかりました。では固定力の向上について教えてください。

A. 人工股関節を固定する方法として、セメントを使う手術法とセメントを使わないセメントレスという手術法があり、私は後者を採用しています。現在、人工股関節ステムには、関節と骨とを結合させる親和性のいいチタン合金が使われるようになり、セメントレス手術の固定力が増しました。そういったことも、耐用年数の延びにつながっていると思います。

Q. なるほど。ということは手術が適用となる患者さんの年齢層も広がってきたということでしょうか?

A. そうですね。ただ日本人の場合、変形性股関節症の原因の約9割が、臼蓋形成不全から進行するケースです。そのほとんどが女性ですけれども、この場合、若い人に関しては、すぐに人工股関節手術をするのでなく、骨切り術が大変有効なんです。我々は50歳までの方で骨切り術の適応があれば、まずこちらを選択します。
ですが、変形が進んだ末期の方や、痛みがひどくて生活に支障のある方は、40代を含めて若くても、人工股関節の適応があってもいいと考えています。それが可能になってきたんですね。昔は、人工股関節置換術は、せめて60代になるまで待ちましょうということだったのですが、現在では、QOL(生活の質)を考慮して、痛みが強いまま10年、20年と過ごすのはできるだけ避けるようにしています。ご本人にとっていかに辛く、いかに生活制限があるか、ということが手術を選択するポイントだと思いますね。

最新の人工股関節置換術とリハビリについて

昭和大学横浜市北部病院 前田 昭彦 先生Q. 次に、人工股関節置換術の最新の手術手技について教えてください。

A. 当院においてはMIS(最小侵襲術)がスタンダードな手術手技ですが、MISとは何ぞやと言えば、筋肉や腱を切らないことだと思っています。手術の際の皮膚切開を小さくするというよりは、筋肉や腱を切らずに温存する手術ですね。このMISを、当院では、2011年からは全症例で採用しています。高位脱臼など、一部、適応とならない症例を除いて全例です。

Q. 筋肉を温存することで患者さんにはどのようなメリットがあるのですか?

A. 私の経験から言っても術後の痛みがかなり低減されるようです。入院期間は2週間程度。5年ほど前には1ヵ月半の入院というのも普通でしたので、現在ではかなり短くなっていますね。あと、当院では人工股関節をより正確に設置するため、半側臥位(はんそくがい)という体位で手術をしています。

Q. 半側臥位というのは初めて聞きました。

A. おそらく他の病院ではやっておられないと思います。通常は仰向けの仰臥位(ぎょうがい)か真横に寝かせる側臥位ですが、半側臥位はその中間で、大体60度の傾きで手術をします。実は、その角度で患者さんを固定して人工股関節を挿入しますと、とてもいい位置に設置できるんです。コンピュータを利用したナビゲーションシステムを使わなくても、簡便に正確に設置することができるんです。この方法を用いて、これまでに脱臼を起こされた患者さんはありません。

Q. それはすごい方法ですね。では手術のリスクについてはいかがでしょう。やはり低減されてきているのでしょうか?

昭和大学横浜市北部病院 前田 昭彦 先生A. まず、「術後感染」ですが、統計的には0.25~1%くらいです。当院ではバイオクリーンルームを完備していますし、手術時間を短縮するなどの努力で、さらにそのリスクを減らすことができると考えています。また股関節の筋肉に力がないと、可動域の終点にきたときに骨頭がはずれて「脱臼」することがありますが、MISを用いて筋肉を温存すれば、力がしっかりと入って股関節を支え、この脱臼のリスクも減らすことができます。
もうひとつ、人工股関節置換術で高リスクとされているのが、下肢の「静脈血栓症」。これを抑えるために、手術後に弾性のストッキングを着用したり、足に専用のポンプを装着したり、血をサラサラにする注射や薬を投与したりしますが、早期の運動療法も、静脈血栓症の予防には効果があると思います。 ちなみにMISを全例で行うようになってからは、幸いにして、脱臼も静脈血栓症も起こっていません。

昭和大学横浜市北部病院 前田 昭彦 先生Q. 筋肉を切らないことで、早期の運動療法もスムーズに進められそうですね。

A. ええ。手術の翌日からリハビリ、運動療法が行えます。それも当院では、特に動作制限は設けず、全体重をかけての力強いリハビリを行っています。ですので、ほとんどの患者さんは、術後3日目くらいには杖をついて歩けるようになりますよ。

Q. そのリハビリですが、退院後も通う必要がありますか?

A. そうですね、人工股関節を入れることで足の長さも少し変わりますし、今までの歩き方とは違う歩き方になりますので、個人的には、リハビリは3ヵ月以上通われるのがいいと思います。もちろん入院中のリハビリで杖歩行はできるようになりますが、歩き方がほぼ元のように戻るかどうかは、最初のうちのリハビリがすごく大事だと思います。ぜひ頑張って3ヶ月は続けていただきたいですね。

Q. 最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

前田 昭彦 先生からのメッセージ

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取材日:2013.10.8

*本ページは個人の意見であり、必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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