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先生があなたに伝えたいこと

人工関節

私はみんなが『WE LOVE 整形』になってほしいんです。

 「WE LOVE 整形」…整形外科診療にたずさわるスタッフが、患者さんを治したいと強く思い、その分野のプロフェッショナルとして仕事や勉強を積極的に取り組んでいくような環境にするためには、「スタッフの結束力が一番重要だ」という横山先生の考えを表現しています。

姫路医療センター(現 大室整形外科) 横山 徳一先生 「ロコモ」(ロコモティブシンドローム) 人工膝関節 人工股関節

先生からのメッセージ 私はみんなが『WE LOVE 整形』になってほしいんです。
Q.運動器とは私たちにとってどれほど大切なものなのでしょうか?

 人間的な生活をするためには運動器の健康が必須だということは間違いありません。自分の足で歩き、自分のことを自分ですることができて初めて人間として充実した生活が送れると思っています。
 心臓や代謝系などの薬は進歩していますが、運動器を治療する薬は非常に少ないということがあります。つまり運動器はメタボや他の疾患のように薬で簡単には治せないものなのです。ですから年齢とともに痛んでいく運動器を、健康な生活の妨げにならないように、疾患を予防することがなによりも大切です。そしてどうしても人間的な生活が困難になるほど痛んでしまった運動器を治療するためには、リハビリや手術がやはり必要となることもあるのです。いつまでも自立して笑顔で生きていくためにも、これからは「メタボ」より「ロコモ」です。

Q.先生のところに来られる、人工関節手術を受けることになった患者さんについて
 受診のきっかけとして最も多いのはどういった患者さんですか?

姫路医療センター(現 大室整形外科) 横山 徳一先生  ずっと痛みがあり我慢されているかたが、どんどん歩きにくくなり、いつまでたっても治らない、と。
自分で外に出るのも困難で、何もやる気がなくなってくる…そういうような方がなんとか痛みをとってくれ、と来院される場合が一番多いです。
 また、家族の方が、痛みが強いご本人を後押しする形で病院に連れてこられる場合も多いです。毎日イタイ、イタイと痛みを訴える家族を見ているのはつらいことですから。見るに見かねてという形です。
 他には、開業医の先生からご紹介いただくことも多くあります。地域のかかりつけのお医者さんと私たちのような手術を行うものが、二人三脚で患者さんをみていくスタイルがより進めることができればと思います。
 あとは最近増えてきているのはやはり口コミですね。
 痛みがあってこちらが生活の手伝いをしてあげていた同じ町内のおばあちゃんが、手術で痛みが取れて、今度は逆に向こうからいろいろしてくれるようになった。歩き方も変わって、何よりとっても生き生き若返ったように見える。うらやましいと思ってやってきた、と患者さんはおっしゃいます。手術をされた方は、よくなったことをどんどん自慢して歩く。遠方からでも「○○の親戚です」というつながりで来院されて、手術を終えて退院した後には、親戚総出で再診にくる、なんていうこともあります。
 全然知らない病院に行って手術をするよりも、よくなった知り合いが通っている先生のところに行く方が安心、というのがあるのでしょうね。

Q.その後手術を考えることになった患者さんに対しては、先生はどのような考えで接しておられるのでしょうか?

姫路医療センター(現 大室整形外科) 横山 徳一先生  基本的に私の方から手術をすすめることはないのですね。患者さんには、これまで手術をされた患者さんの例をあげて、どのような症状だったか、そこにどのような手術を行ったか、そして術後に患者さんはどれだけ回復したのか、などの話をさせていただきます。人工関節という手術の実際、そしてメリット、デメリットなどの話をした上で、最終的には患者さんに決めて頂きます。私たちの方から「あなたは手術しなさい」ということはまずありません。
 患者さんも大きく二通りありますね。「最初からここで手術するのだ」と決めて来られる方もいれば、悩みながら家族に後押しされて来られる方もいます。後者のかたですと、ここ(診察室の椅子)に座ってもずっと悩んでしまいますよね。ですから私はその時に「しっかりと話す」ということを大事にしたいと思っています。
 木曜日の午後はそういった方のために人工関節外来をかなりゆっくりとした時間をとって行っております。人工関節の模型を見せたり、患者さんのレントゲン写真を見ながら説明をしたり、患者さんとゆっくり会話しながら、手術についての疑問や不安を解消してもらい、自分の納得いく決断をしていただく。もしまだ悩み足りないのであれば、次の予約をさらに取って頂き、その間にスタッフの手作りのパンフレットや、入院生活のしおりなど、手術についてイメージできるものをお渡しして読んで頂いています。
 少し違いますが、例えばクルマを買うのでも、電化製品を買うのでも、パンフレットを眺めたり、お店の中で悩むでしょう?冷蔵庫を買うのでもあれだけ悩むのですから、自分の体に関わる人工関節手術について悩むのは当然なのですよ。逆に悩んでいただきたい。そして自分が納得いく決断をして、「やるぞ」と決めてきていただければと思っています。そのほうがリハビリも前向きにすすみますし、いい結果が生まれます。ですから私はその答えがでるまで待っています。

Q.手術前の会話を大事にされている先生ですが、術後の患者さんとはどのような会話があるのでしょうか?

 最初の1~2ヵ月はまだ痛みが残っていることもあり、「痛いんですけどね」と、膝をさすっていることもあるのですが、その後再診の度に表情が変わってきて、3ヵ月、1年と経った時には、「見て!」と、痛みがなくなったことを非常に喜びながら、自分から脚を見せてくれるようになります。病院の近くに百貨店があるのですけど、そこに私たちが休日に行くと患者さんから声をかけられて、「買い物に来れるまでになったよ」といっていただけたり。退院した後は、定期検診でしか会わなくなるので、久しぶりにお会いすると、ウワッと良くなった話をしてくれる。それを聞かせていただくのは外科医冥利に尽きますね。

Q.先生は共に手術をされる手術室スタッフの方への教育システム構築に積極的に取り組んでおられると聞いております。具体的にはどのようなものなのでしょうか。

姫路医療センター(現 大室整形外科) 横山 徳一先生  そうですね。大きく分けて手術部向けと病棟の看護部向けの2つがあります。私はいつも「医者というのは船長さん」といっています。船長ひとりでは船は動かない。スタッフ全員が同じ方向を向いて協力していくことによって船が動いていく。治療も手術も同じで、同じビジョンで前に進んでいかないと、うまくいきません。私が船長としてスタッフを先導するために考えたのが、この教育システムです。
 手術部に関していうと、手術というのは“あうん”の呼吸で流れるように進まなければいけません。一方で人工関節の手術は非常に器械が多く複雑であるという特徴があります。そのためスタッフ全員が同じイメージを描きながら進むことが、より重要になってきます。そのために器械を使う手順や、医師である私が考えている大事なポイントを書いたスライドを作り、事前に皆で勉強して共有できるようにします。このシステムでは、イラストや写真を入れて、手術のイメージトレーニングができやすいような工夫もしています。スライドを自分たちで作りあげる、という過程もイメージトレーニングの一環になりますし、それが実際の手術現場で活きてくるのです。
 最近は、「MIS(エム・アイ・エス: 最小侵襲手術)」* といわれる傷が小さい手術が話題になることが多いのですが、傷が1センチ、2センチと小さくなること・・私はそれだけが患者さんにとっての最小侵襲だとは思いません。私も一般的にはMISと呼ばれる小さめの傷で手術を行っていますが、それ以上に、手術がスムーズにそして正確に、手術が行われること、それが患者さんにとって本当の最小侵襲になるのであろうと考えています。それが提供できるようにと、スタッフと一緒にこの教育システムを進めていきたいと考えています。

人工股関節のMISについて* 人工膝関節のMISについて*

「侵襲」とは、治療によって体に加わる主に身体的なストレス、生体機能のダメージのことをいいます。
そのダメージをできるだけ少なくすることが「最小侵襲」です。

姫路医療センター(現 大室整形外科) 横山 徳一先生  病棟の看護師さんは、日常の仕事も多いので、勉強するのが大変な環境にあるといえます。しかしこれだけたくさんの人工関節の手術をやっているのですから、スタッフの誰に聞いてもプロフェッショナルな答えが返ってこないといけないとも考えています。病棟スタッフ全員にハイレベルな知識を持ってもらうために、人工関節チームというものを作り、全体のレベルアップを目指しています。まずはトップの私が全員に、エビデンス(根拠)のある知識や、注意点など一般的なことを講義します。その後、全てのスタッフに担当をつけます。「A看護師は感染対策担当、B看護師は脱臼予防担当、C看護師は人工関節の申請書類に関してを担当・・」というようにです。自分の担当がひとつであれば、本を読んだり学会で勉強したり、と勉強しやすく、各々がレベルを高めていくことができます。それを最終的に全員ですり合わせることで、自分の担当以外の知識も高まります。
 ここでもまたスライドを活用しております。各スタッフには最終的に自分の担当分野のスライドを作ってもらいます。入院されてくる患者さんに見ていただくための説明スライドで、スタッフの声でナレーションをいれて、患者さんと家族の方にも一緒に見てもらっています。各々が担当した専門性の高いスライドですから、患者さんは高い知識を得ることができますし、患者さんのことをよく分かっている看護師さんが作っているので、患者さんの頭に自然に入っていきやすいという面もあります。医療用語は難しい言葉が多いですから、より患者さん目線の内容になるよう心がけています。
 チームで仕事をすることができると、私ひとりではとうていこなせない仕事を、スタッフの一人一人を強化することで、より良いものに引き上げることができます。そして患者さんからすると、先生だけでなく誰に聞いてもきちんと答えてもらえる、頼れる病棟になるのです。

Q.教育システムは患者さんにとってどのような恩恵があるのでしょうか。

 手術に関していうと、スライドによりイメージトレーニングができているので、手術中でもスタッフは自信をもって動けます。手術が滞りなくサアッと流れると私も気持ちいいですし、看護師さんも気持ちいいですよね。結果、患者さんに満足していただける手術ができると考えています。
 スタッフみんなが「WE LOVE 整形」という気持ちを持っており、「患者さんを治したい」と思っている中で患者さんは手術を受けるのと、そうでないのでは、結果が大きく違うと思うのですよね。好きこそものの上手なれ、ですよ。自分の親だったらそういうところに連れて行きたいと思うでしょう?そういうスタッフとともに仕事をしたいですね。

Q.整形外科医として思うことは?

姫路医療センター(現 大室整形外科) 横山 徳一先生 運動=ウォーキング と思っている人が多いと思います。でもそれだけが運動ではないのです。歩けなくなったら運動ができなくなって終わり…ではありません。筋肉は内臓と違って100歳でも鍛えることができます。あらゆる年齢の人々が、自分らしく生きていくのに必要な筋力を維持しながら、活力を持って毎日を過ごす。元気で活力にあふれるご年配の方を見て、若い人も負けずと元気になる。それが日本全体を幸せにすると思うのです。

Q.最後に患者さんへのメッセージをお願いいたします。

横山 徳一先生からのメッセージ

※ムービーの上にマウスを持っていくと再生ボタンが表示されます。

取材日:2009.7.24

*本ページは個人の意見であり、必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。

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