人工関節と関節痛や股関節・膝関節の痛み(股関節痛、膝関節痛、肩関節痛、肘関節痛、足関節痛)の情報サイト:関節が痛い.com
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多いですね。当然のことですが、患者さんで手術が好きな人はいません。多くの患者さんは、「手術を受けるなら1回だけにしたい」と。人工股関節が一生保つかどうか…その点を悩まれていますし、それは若い方だけでなく70歳代の方でも同じ悩みを持たれています。
私の患者さんで多い年代は50歳代です。幅でいうと50歳~80歳と広がりますが…。私はまず、今の人工関節では「70歳以上であれば入れ替えを気にする必要はないでしょう」と伝えています。40歳代、50歳代で手術を受ける方は、1回の手術で一生保たない可能性が相当あります。こういった方達に1回は入れ替えの再手術を覚悟しておくことをきちんと伝えると、多くの方は納得して手術を受けてくださいます。「自分のやりたいことができていますか?」と尋ねると「できてないな…」と。それだったら「チャレンジしようか!」ということになるんですね。
手術を受けるということに関していうと、基本的に、その患者さんが「今の生活で幸せかどうか」で判断することが大切だと考えています。
「今やりたいことがあってもできない」「痛みが辛い…」そういった思いがあれば、手術を受けるメリットが大きいのではないでしょうか。
第一に、「脚の長さとオフセットを最適化する」ということを考えています。脚の長さに違いが出る理由としては、先天的に関節が脱臼している先天性股関節脱臼である場合や、大腿骨頭壊死(だいたいこっとうえし)などで骨頭がつぶれてしまって、右と左の脚の長さに差が出てくる場合があげられます。手術後に、それが正常になるように、当院では専用器具を用いて手術中に脚の長さとオフセットを計測しています。人工関節を入れる前後での変化を計測し、脚の長さとオフセットを最適にする部品を選ぶようにしています。ここまでやっている病院は、非常に少ないと思います。
脚の長さが違うと跛行(はこう)(*1)が出てきます。これは患者さんにとってかなりのコンプレックスになります。脚の長さが違うのでズボンがはけないとか、靴を上げ底にしないといけないということもあります。女性ですと好きな服も好きな靴もはけないということになり大変辛いでしょう。ですので、人工股関節手術で脚の長さを矯正することは大切なことだと考えて手術を行っています。
跛行の原因は、脚の長さだけではありません。オフセットが足りないと股関節周囲の筋肉が弛んで、やはり跛行の原因となります。これを防ぐためには、オフセットの合った人工股関節を選択することが重要であり、「患者さん一人一人に適した人工股関節の機種を選択するお手伝い」という考えが出てくるのです。
(*1) 跛行:歩行に異常をきたし、脚をひきずって歩くこと
オフセットとは、簡単にいうと大腿骨が体の中心からどれだけ横に出ているか、その長さのことです。例えば、オフセットが短かすぎる人工股関節を使ってしまうと、その周囲の筋肉(中殿筋(ちゅうでんきん))がたるんでしまいます。筋力が弱いことで生ずる跛行は、適切なオフセットの人工股関節を選択することで防ぐことができます。
オフセット以外にも、患者さんの骨の形(髄腔(ずいくう))(*2)に合った人工股関節を選ぶということも意識しています。髄腔の形も患者さんによって様々です。セメントを用いない手術を行う場合は、骨と人工股関節の間を埋めるセメントを用いないということですので、骨の形を見て、そこに合う機種を選択します。
人工股関節の機種の違いは形だけではありません。患者さんの年齢や活動性に合った摺動面(しゅうどうめん)(*3)の人工股関節を選ぶということも考えています。
人工股関節の摺動面にはいくつかの組合せがあります。ポリエチレンのライナー(下図Aの部分)とアルミナ・セラミックの骨頭(下図Bの部分)という組合せで、耐摩耗性も高く、長期成績が望めると思っています。しかし、活動性の高い40歳代から50歳代で手術を受ける方の場合はセラミックのライナーとセラミックの骨頭という組合せや、メタルのライナーとメタルの骨頭の組合せがあるということも患者さんに話をして、一緒に考えて選んでいます。
(*3) 摺動面:人工関節の骨頭とライナーがこすれあう面
詳しくいいますと…年齢的に60歳を超えていれば、ポリエチレンのライナー(上図Aの部分)と通常のメタルまたはセラミックの骨頭(上図Bの部分)の組合せで十分でしょう。現在のポリエチレンはクロスリンクといって、以前に比べて非常に摩耗が少なく改良されていますから。但し患者さんが「私は手術後も活動的に動きたい」という場合には、別の組合せの選択肢を提示する場合もあります。
もう少し若い方の場合は、若いゆえに活動性も高く、高齢の方に比べると現在のポリエチレンライナーでもすり減る可能性が多少高いことも説明します。さらにすり減らない組合せもあるということで、先ほどいった別の組合せを紹介します。
ただし、セラミックどうしだと破損の可能性が多少ある、メタルどうしだと金属イオンの流出が多少ある、などの短所もきちんと説明して、患者さんがどれを好むかということで決めています。
例えばデジカメを買うとき、一眼レフとそうでないもの…そしてメーカーもいろいろありますが、店員さんにきちんと説明してもらえばわかりますよね。それと同じで、患者さんも説明すればわかってくださいます。
知っておかなければいけない知識というものは特にないと思います。ただ、手術というものには何らかの危険が伴うということと、その危険の先に何があるかを知っていただきたいと思います。極論をいえば、人工関節の手術で亡くなる場合もあるわけです。
どんな医療にも100%はないので、リスクの話をしているわけですが、それはリスクが高いという意味ではありません。逆に、リスクとしてはそれほど過大ではないという話もきちんとしますね。
私が電気屋さんにいってハイビジョンのテレビを買うという時に、その製品について何も知らずに買うということはまずありえません。人工関節は、お金でいうと100万円以上します(*2)。そんなに高価な買い物をする時に、買うもののことを知らないのはおかしいですよね。自分の体に入る人工股関節の手術なのに、患者さんたちは人工関節の会社がどういった会社か全く知らない上に、どのようなものかも知らない…。それではよくないだろうということで、患者さんへの情報提供の場として開催しています。
それと、院内で患者さんと接しているだけでは見えてこないものがあると思います。それを見たいという思いもあります。例えば医師は、手術後の患者さんに色々な生活指導をします。その後の定期検診では何もおっしゃらない方でも、こういったイベントでは「結構苦労してるんです」とポロっと本音を出されることがあります。
このイベントには、“たつのこ山ウォーキング”というプログラムがあるのですが、ここでも新たな発見があります。階段をまっすぐ登るコースと、スロープのゆるやかなコースがあるのですが、手術後の患者さんに「スロープのコースを行きましょうか」といっても、階段をどんどん登っていかれるのです。“患者さんは私が思っている以上に、人工股関節を使って生活している…”そういう場面は実際に見てみないとわからないですよね。
(*1) たつのこ人工関節祭りについて:http://www.ryugasaki-hp.org/2009kansetsu/photo.htm
(*2) 健康保険が適用されますので、実際の金額は低くなります。
支払の内容は患者さんによって異なるため、詳しくは主治医にご相談ください。
人工関節の医療費について 龍ヶ崎済生会病院 「人工関節Q&A」のページQ19にて先生が詳しく説明されています :http://www.ryugasaki-hp.org/2009kansetsu/Q_list.htm
最初にそう思ったきっかけというのが、私がカナダに留学していた時に、そういったイベントがあったからなのです。それは関節が悪い人の集まるイベントで、それを見た時に、これはすごくいいなと思いました。500名くらいが入るすごく大きなホールを借りきって、公園の周りをウォーキングしたり、あるいはそこでダンスパーティーがあったり…。そういうところからアイデアをもらって始めました。今後はもう少し本格的なウォーキングイベントなどをやってもいいと思いますね。
取材日:2009.8.11
*本ページは個人の意見であり、必ずしも全ての方にあてはまるわけではありませんので詳しくは主治医にご相談ください。